夏場のスポーツや屋外作業では、熱中症対策として水分補給が欠かせません。その際によく利用されるのがスポーツドリンクです。しかし、「スポーツドリンクなら何でもよい」と考えていないでしょうか。

スポーツドリンクには、浸透圧の違いから「アイソトニック飲料」「ハイポトニック飲料」と呼ばれるものがあります。こうした違いは、主に飲料に含まれる糖質や電解質などの濃度によるものです。

また、暑熱対策では「何を飲むか」だけでなく、「どのような温度・状態で摂取するか」という視点も重要です。近年では、微細な氷の粒子を含む「アイススラリー」を摂取する身体冷却法も研究されています。

本記事では、発汗によって身体に起こる変化から、アイソトニック飲料とハイポトニック飲料の特徴と選び方、さらにアイススラリーによる身体冷却の考え方を紹介します。

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暑熱環境では身体の水分バランスが大きく変化する

暑熱環境では身体の水分バランスが大きく変化します。その理由を解説します。

汗による体温調節と水分損失

人間の身体には、体温を一定の範囲に保つ仕組みがあります。

暑い環境や運動時に体温が上昇すると、身体は汗を分泌します。その汗が皮膚表面で蒸発するときに周囲から熱を奪います。これは水の「気化熱」を利用した冷却であり、人間にとって重要な体温調節機能の一つです。

一方、発汗によって失われるのは水分だけではありません。

汗には、水分のほかにナトリウム、カリウム、塩化物イオンなどの電解質が含まれています。そのため、大量に汗をかく環境では、水分とともに失われた電解質を補給することも重要になります。。

大量発汗によって体液はどのように変化するのか

汗は一般に体液よりも低張であるため、大量に発汗すると、水分の損失割合が電解質の損失割合を上回り、体液の浸透圧が上昇する方向に変化します。身体はこうした変化を感知し、口渇などを通じて水分摂取を促します。

つまり、大量に汗をかいた身体では、

  • 失われた水分を補給する
  • 失われた電解質も補給する

という両方の視点が重要になります。

こうした身体の状態を理解することが、暑熱環境における飲料選択を考える第一歩です。

スポーツドリンクは「浸透圧」によって分類される

スポーツドリンクを選ぶ際によく使われる言葉に、「アイソトニック」と「ハイポトニック」があります。

その違いを理解するために、まず「浸透圧」について簡単に確認しておきましょう。

浸透とは、半透膜を隔てて濃度の異なる溶液が存在するとき、水などの溶媒が濃度の低い側から高い側へ移動する現象です。浸透圧は、この浸透に関係する圧力を表します。

飲料では、糖質や電解質など溶けている成分の濃度によって浸透圧が変化します。

アイソトニック飲料とは

アイソトニック(Isotonic)とは、「等しい浸透圧」という意味です。

アイソトニック飲料とは、一般に体液に近い浸透圧に調整された飲料を指します。糖質を比較的多く含む製品も多く、水分や電解質とともにエネルギー源となる糖質を補給できることが特徴です。

そのため、

  • 運動を始める前
  • 長時間の活動に備えるとき
  • 水分・電解質とともに糖質も補給したいとき

などの選択肢になります。

浸透圧のイメージ図

ただし、「アイソトニックだから必ず活動前に適している」と一律に決まるわけではありません。運動や作業の時間、強度、発汗量、食事の状況なども考慮して飲料を選ぶことが重要です。

ハイポトニック飲料とは

ハイポトニック(Hypotonic)とは、「浸透圧が低い」という意味です。

ハイポトニック飲料は、一般に糖質濃度を比較的低くすることで、体液よりも低い浸透圧に調整された飲料です。

飲んだ水分が体内へ取り込まれるまでには、飲料が胃から小腸へ移動する「胃排出(Gastric Emptying)」や、小腸での水分・電解質の吸収など複数の過程が関係しますので、水分吸収の速さを「浸透圧の低さ」だけで説明することはできません。

飲料の糖質・ナトリウム濃度、摂取量、運動強度など、さまざまな要因が影響しますが、一般に、糖質濃度が比較的低く、水分補給を重視して設計されたハイポトニック飲料は、

  • 運動中の給水
  • 長時間の屋外作業
  • 大量に汗をかいたときの水分発汗後の休憩時

などで選択肢になります。

なお、脱水時の水分・電解質補給を目的として設計されたものに「経口補水液(ORS)」があります。経口補水液は、ナトリウムや糖質の濃度が水分吸収を考慮して設計されており、一般的なスポーツドリンクとは目的や組成が異なります。日常的なスポーツドリンクと同列に考えるのではなく、脱水状態など必要な場面に応じて適切に使用することが大切です。

腸管内の浸透圧が低い液体の水分が、小腸組織内に移動するイメージ図

アイソトニックとハイポトニックの「使い分け」

アイソトニック飲料とハイポトニック飲料は、どちらが優れているというものではありません。

重要なのは、そのとき何を補給する必要があるのかです。

例えば、活動前など、水分・電解質に加えて糖質も補給したい場面では、アイソトニック飲料が選択肢になります。

一方、暑熱環境での活動中など、水分補給を重視したい場面では、糖質濃度が比較的低いハイポトニック飲料が選択肢になります。

ただし、長時間の運動では活動中にも糖質補給が重要になる場合があります。

したがって、

「活動前=アイソトニック、活動中=ハイポトニック」と一律に決めるのではなく、発汗量や活動時間、糖質補給の必要性などに応じて選択する

と考えるのがよいでしょう。

また、アイソトニック/ハイポトニックという分類はメーカー名や商品名による分類ではありません。スポーツドリンクを選ぶ際には、ブランド名だけで判断するのではなく、用途や栄養成分表示などを確認することが大切です。

アイソトニック・ハイポトニック飲料の成分の目安

参考:https://athtrition.com/160708/

アイソトニック飲料の例: ポカリスエット、アクエリアス、GREEN DA・KA・RA、ビタミンウォーターなど

ハイポトニック飲料の例: スーパーH2O、イオンウォーター、アミノバイタル、VAAMウォーター、ラブズスポーツ、アクエリアスゼロなど

暑熱対策では「飲料の種類」と「温度・状態」の両方が重要

ここまで、暑熱環境における「何を飲むか」について見てきました。

しかし、暑熱対策を考えるうえでは、もう一つ重要な視点があります。

それが、

「どのような温度・状態で摂取するか」

です。

暑熱環境でのスポーツや屋外作業では、水分や電解質を適切に補給することが基本です。一方で、気温や湿度が高い環境では、汗の蒸発による放熱が十分に行われにくくなり、身体に熱が蓄積しやすくなる場合があります。

そこで、水分補給に加えて、暑熱環境に入る前に身体を冷却する「プレクーリング」や、活動中に身体を冷却する方法などが研究されています。

その一つが、アイススラリーを利用した内部冷却です。

アイススラリーによる身体冷却

アイススラリーとは、微細な氷の粒子と液体が混ざったシャーベット状の飲料です。通常の冷たい飲料との大きな違いは、飲料の中に「固体の氷」が存在していることです。

この氷が融けるときに重要になるのが、「融解熱(融解潜熱)」です。0℃の氷1gが0℃の水になるためには、約334Jの熱を周囲から吸収します。

したがって、アイススラリーには、

  • 飲料と身体との温度差による熱移動
  • 氷が融ける際の融解潜熱による熱吸収

という二つの熱的な要素があります。

同じ質量・同じ温度の液体だけを摂取する場合と比べれば、氷を含むアイススラリーには、氷の融解に必要な潜熱分だけ大きな熱を受け取る能力があります。

この物理的特性を利用し、暑熱環境での運動や作業前にアイススラリーを摂取する「内部冷却(internal cooling)」が研究されています。

運動前のアイススラリー摂取によって深部体温などの体温指標が低下した研究も報告されていますが、その効果は摂取量や環境条件、運動条件、個人差などによって異なります。したがって、アイススラリーは暑熱対策の一つの選択肢として考え、適切な水分・電解質補給や休憩、作業環境の改善などと組み合わせて活用することが重要です。

※アイススラリーの基本的な仕組みや、現場で手間なく利用する方法については、第一弾の記事「アイススラリーとは? 現場で手間なく使う3つのポイント!」で詳しく解説しています。

Cool Lab アイススラリーメーカーが暑熱対策に貢献できる理由

Cool Lab アイススラリーメーカーは、手軽にアイススラリーを生成することができるセットです。その特長を紹介します。

目的に合わせて飲料を選べることも重要

暑熱対策では、活動内容や発汗量、糖質補給の必要性などに応じて飲料を選ぶことが重要です。

そのうえで、飲料をアイススラリー化することができれば、水分・電解質などの補給と、氷の融解潜熱を利用した内部冷却という二つの視点を組み合わせることができます。

Cool Lab アイススラリーメーカーは、対応可能な市販飲料を利用できるため、特定の専用飲料だけに限定されず、目的に合わせて飲料を選択できることが特徴です。

例えば、水分・電解質とともに糖質補給も考えたい場面、水分補給をより重視したい場面など、その日の活動内容や環境に合わせて飲料を選択できます。

※飲料の種類や成分によってアイススラリーのでき方は異なるため、使用可能な飲料については事前にご確認ください。

電源不要で現場へもちこめることが大きなメリット

実際の暑熱環境では、必要な場所に冷凍庫や冷却設備があるとは限りません。

たとえば、

  • 建設現場
  • 土木作業現場
  • 屋外イベント
  • スポーツ大会

などでは、冷却設備を確保することが難しい場合があります。

Cool Lab アイススラリーメーカーは、専用の蓄冷剤と飲料を保冷ボックスにセットすることで、現場で電源を使用せずにアイススラリーを利用できます。

暑熱対策では、「何を飲むか」と同時に、必要な場所・必要なタイミングで冷却された飲料を利用できるかという運用面も重要です。

電源や冷凍設備のない場所へ持ち込めることは、実際の作業現場やスポーツ現場でアイススラリーを活用するうえで大きなメリットとなります。

野外に置かれたアイススラリーメーカーのイメージ

まとめ 暑熱対策は「飲料選択」と「冷却」を組み合わせて考える

暑熱環境での水分補給では、スポーツドリンクをひとくくりにするのではなく、その特徴を理解して目的に応じて選ぶことが大切です。

アイソトニック飲料は、一般に体液に近い浸透圧に調整され、糖質を比較的多く含む製品もあるため、水分・電解質とともに糖質補給も考えたい場面で選択肢になります。

一方、ハイポトニック飲料は、一般に糖質濃度が比較的低く、水分補給を重視した場面で選択肢になります。

ただし、飲料の選択は「活動前か活動中か」だけで決まるものではありません。発汗量、活動時間、運動・作業強度、糖質補給の必要性などを考慮することが重要です。

そして暑熱対策では、「何を飲むか」に加えて、「どのような温度・状態で摂取するか」という視点もあります。

アイススラリーは、飲料に含まれる氷が融ける際の融解潜熱を利用できることが、通常の冷たい飲料との熱的な違いです。

Cool Lab アイススラリーメーカーは、対応可能な市販飲料を使い、電源のない現場でもアイススラリーを利用できる仕組みです。

暑熱対策の基本である水分・電解質補給、休憩、作業環境の改善などに加え、

「目的に応じた飲料を選ぶこと」
「適切な温度・状態で摂取すること」

という視点も取り入れることで、より実践的な暑熱対策につながります。

Cool Labでは、蓄冷剤や熱物性制御技術を活用し、現場環境に合わせた温度管理ソリューションをご提案しています。

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